後輩の着物の裾が、どうにも気になった。
「ちょっと待って」と呼び止めて、裾を引っ張って、帯を少し直す。
直しながら、ふと思った。
あれ。
これ、昔の私じゃん。

新人だった頃、着物は一週間くらいでなんとか一人で着られるようになった。
でも、仕事をしているとすぐに着崩れる。
「月ちゃん、ちょっとこっち来なさい」
姐さんに呼ばれて、帯を直される。
裾を引っ張られる。
またかぁ……と思いながらも、私はこの時間がけっこう好きだった。
私には実の姉がいないから、「姉さん」に世話を焼いてもらうのが、なんだか嬉しかったのだ。
……まぁ、当時は
「うるさいなぁ、このクソババァ」
くらい思った日もあったけど(笑)。
そんな私が今日、後輩の裾を引っ張っている。
私も、いつの間にか「姉さん」になっていた。
あの頃、何度も私の着物を直してくれた姐さんたち。
今になって、あの手のありがたさが少しわかる。
……でもきっと今日の後輩も、心の中では思っている。
「うるさいなぁ、このクソババァ」って。

コメント